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我々のモデル分析を参考にする際に心に留めてほしい3つの事
1. モデルの予測は大きく外れる可能性があります
コロナウイルス感染にはわかっていないことが沢山あります。感染症対策が人々の行動・経済に与える影響にもわかっていない事が沢山あります。これらはどんなに必死に考えてもどんなに沢山データを集めて分析しても完全にはわかり得ない事象です。時間的制約の範囲内で我々はベストを尽くしていますが、それでも我々のモデルから出てくる予測は外れる可能性が高いです。
感染症の動きは実効再生産数が1を超えると指数関数的に増加します。そのような場合ちょっとした仮定の違いやパラメターの違いが予測値にとても大きな違いを生み出します。従って、我々のモデルの予測は単に外れるだけでなく、大きく外れる可能性があります。
2. モデルが提供出来る三つのこと
正確な予測が提供できないとしたら、我々のモデルは何を提供出来るのでしょうか。
3つあります。(1)定性的な知見、(2)議論のたたき台となり得るある程度信憑性のある試算、(3)意見が異なる人々の間でのイメージ共有、の三つです。
(1)と(2)の具体例としては、我々が行った東京の緊急事態解除基準分析の資料をご覧下さい。そこに記述される知見は「言われてみたら結構当たり前だけど、言われるまでは思い浮かばなかった」・「なんとなくわかっていて喉まで出かけていたけど、言語化出来てなかった」という類の知見で、これまでの議論では出てこなかったように思えます。そのような知見は、現在のあるべき政策に示唆を与えてくれることがあります。
(3)について。意見の違う人々があるモデルの分析結果を共有することで(A)その意見の違いが現状認識・将来予測の違いによるものなのか、(B)それとも価値観の違いによるものなのか、がわかりやすくなります。そして、お互いに共存していくための妥協点が見出しやすくなります。
例えば、感染を抑えるためにどのくらい経済活動を縮小すべきか、という問いに対して意見の異なる二人がいるとします。その二人が異なる意見を持つ理由としては、(A)経済活動を縮小することでどのくらい感染を抑えることができるのかに対する認識が違う、(B)感染症対策で一人でも多くの命を救うことが、経済活動縮小を少しでも和らげることと比べてどれくらい大事なのかという価値観が違う、という全く異なる二つの理由があり得ます。
その二人がある妥協点を見つけて上手く共存していこうとしたときに、(A)の理由で意見が異なるのか、それとも(B)の理由で意見が異なるのかが全く分からないと、話が平行線になって前に進みにくいかもしれません。しかしながら、その二人があるモデル分析結果を見て具体的なイメージを共有できると、少なくとも何故意見の相違があるのかが分かりやすくなります。時には、二人が考えていたよりも実際には意見の相違はなかったことが分かるときもあります。どちらにせよ、何故意見が違うのかよくわからなかった場合よりも、心地よく共存していく方向を探りやすくなります。
3. モデル分析は皆さんの声援・批判によって成長します
皆様の声援・批判によって、モデルもモデルを使って分析する我々も成長します。我々のモデルは生まれたばかりの赤ちゃんのような存在です。愛情を注がれて、しっかり栄養を吸収することですくすくと育ちます。ときには叱ってあげることも必要です。
我々は、毎週データをアップデートし結果を分析するというプロセスを繰り返すことによってモデルの性質を学んでいきます。我々のモデル分析結果が全く非現実的で役に立たない時もあると思います。しかしながら、「あ、このモデルいい事言ってる」という時もあると思います。全く役に立たないように見える局面では、批判をすると同時に励ましてあげて下さい。良い事言っているような局面では、調子に乗らないように批判をしてあげて下さい。皆さんが我々のモデルのパートナーとして一緒に歩んでくれることで、モデルも我々も大きく成長することが出来ます。
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